吉村誠ブログ「いとをかし」

元朝日放送プロデューサーで元宝塚芸術大学教授の吉村が、いろいろ書きます。

M-1補足と、朝日放送スキャンダル

M-1グランプリ」の余波が、まだ色んなところで続いていますね。

僕も、創設プロデューサーとして、前回のブログで今年の「M-1」について思うところを書いたのですが、その後、教えている大学生たちからたくさんの質問を受けました。

 

で、その応答の中から、少し。

まず、僕が漫才師さんたちの「力」を判定する基準にしている「声」について、です。

「声」と言うと、多くの人が「大きい声か、小さい声か、ですか?」と尋ねてくるのですがそうではありません。「声」が「強いか、弱いか」なのです。

 

マイクに乗る「声」とは

ご存知のように、人間の身体は「管楽器」です。身体の中から吐き出す息を、喉・口蓋・舌・歯・唇、で加工調音することによって、息が音になり「声」になります。

で、上手い漫才師さん達は、身体全体を使って、腹の底から息を出しているんですよね。ですから「声」がしっかりしていて「強い」んです。

「声」は音波ですから、たとえ小さくても「強い声」は棒状になって相手にきちんと届きますし、マイクにもしっかりと乗ります。

逆に喉から上だけ、口先だけで喋っている「声」は、大きくても拡散してしまうのでマイクに乗りにくいですし、やかましいと感じられてしまうんです。

 

上手な漫才師さんの「声」って、すごく聞き取り易い。

今回の「M-1」の出演者で言えば、「和牛」の川西くん、「ジャルジャル」の福徳くん、「さや香」の石井くん、の「声」は大きくないけど挨拶の一言目からはっきりと聞き取れましたでしょ。

漫才師さん達は、育ってきた人生の過程の中で、また芸人になってからは舞台の喋りの中で、「強い声」を身に付けてゆきます。僕はこれを「芸人の素力」と呼んでいます。

この「素力」の上に、「ボケと突っ込み」といったテクニックや「ネタの練り込み」が成立するんです。

漫才師さん達と直接に話しをしたら、彼らの「声」がふだんから「太くて、強い」ことにきっとびっくりしますよ。これは漫才師さんだけでなく、舞台俳優さんにも共通しています。ですから「舞台声」とも言います。

 

実は、「声」についてのこの秘密――別に秘密でもないんですが――は、漫才や演劇だけでなく、僕らの実生活でのコミュニケーションにとても役に立つことなので、今後の参考にしてほしいなと思います。

 

続く朝日放送関係のスキャンダルについて

さて、さて、「M-1」でせっかく名を上げた、我が古巣の朝日放送だったのですが、今週は全く別のことで話題になってしまいました。

「女優・藤吉久美子の不倫疑惑」、かの文春砲です。

知人から朝日放送が話題になってるでぇ」と言われて、最初は何のことかわからなかったのですが、週刊文春を買って読んでみて初めてわかりました。

藤吉久美子の不倫相手は、朝日放送のプロデューサー!」だったんですね。

 

あーら、まぁ、何ということでしょう。

先週は「隠し子の母・激白」で宮根誠司くん、彼は元・朝日放送のアナウンサー。

今週は「女優の不倫相手」で、現役の朝日放送ドラマプロデューサー。

二人とも、僕の後輩なんです。

 

うーん、いささか辛いですね。

朝日放送」人は、倫理観念に乏しい人間ばかりのように思われそうで。

 

で、宮根くんも、Aプロデューサーも、きちんと自らの従事するメディアにおいて、正々堂々と記者会見して思うところを述べるべきだ、と僕は思います。

なぜなら、免許事業たるテレビは「紛れもない社会的権力」であり、その出演者も制作者も「社会的権力者」だからです。

「権力」は「責任と義務」に裏付けられているもの、だからです。

 

それをしないかぎり、

「ABC制作の情報番組は全て芸能コーナーがあるけど、この問題はやっぱりスル―ですかね?他人に厳しく身内に甘い朝日放送

というネット上に現れた、一般庶民の「素直で強い声」に反論はできないのではないでしょうか。

 

このスキャンダルの話題、ブログに上げるかどうかを少しばかり悩みました。

ですが、「朝日放送 M-1グランプリ創設プロデューサー」として発言している者として、二つのスキャンダル報道について「スル―」するのは良くない、と思って上げました。