吉村誠ブログ「いとをかし」

元朝日放送プロデューサーで元宝塚芸術大学教授の吉村が、いろいろ書きます。

トークイベント「ときを掬ぶ」レポート

2017年9月19日~10月1日、アートスペース虹でcross border works 遊糸による「ときを掬ぶ」展が開かれました。9月26日には良恩寺でトークセッションもさせていただきました。トークセッション中にはTwitterで実況したのですが、それをまとめたものをこちらで掲載いたします。

また、遊糸洞では現在、キックオフプログラム「ひとはなぜつくるのか」連続講座を開催中です。一回だけの出席も可能ですので、ぜひお越しくださいませ。

第6回「テレビと映画とことば」吉村誠

 12月16日(土) 15:00~17:00

第7回「写真をめぐる物語」吉川直哉

 1月20日(土) 15:00 ~17:00

第8回「スペシャルゲスト」

 2月17日(土) 15:00~17:00

第9回「クロージング・セッション」(公開)

 3月17日(土) 15:00~17:00

各回2500円(学生1200円) ※第9回は無料

会場:遊糸洞(大阪市北区堂島3-2-19 松岡ビル1F)

住所・氏名・電話番号・メールアドレスを記載の上、メールにてお申し込みください。

お申込み先:you.see.dou@gmail.com

 

トークイベント「ときを結ぶ」

(遊糸メンバーによるトークセッション)

2017年9月26日(火) 19時~ 良恩寺

 小清水漸(彫刻家、遊糸代表)

 上田順平(やきもの作家)

 児玉靖枝(画家)

 山口尚(ゲームクリエーター)

 吉川直哉(写真家)

 吉村誠(メディアプロデューサー)

 ゲストアーティスト・北川淳一(テクノロジーアーティスト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半に出てきた「展示の空間を侵食しあう」という話題が興味深かったです。

普通だったら作品一点をそれだけとして、他から干渉されないように展示するらしいのですが、今回のアートスペース虹「ときを掬ぶ」展では、小清水氏の作品の上に上田氏の作品を置いたり、児玉氏の画の上に山口氏と北川氏の作品を乗せたり、吉村の展示の台座が小清水氏の作品だったりと、独立した作品のように見せかけて実は干渉しているされている、そんな展示をしていました。

それぞれの宇宙が他者とかかわりあう世界を、あの空間で表現されていたのかな、と今更ながら助手は思いました。

吉村的流行語大賞は……

近頃、世の多くの人もすなるブログといふものを、我もしてみんとしてすなり。

てな訳で、今日から、吉村誠ブログ「いとをかし」を始めます。

もともと友だち仲間としゃべる時に、話の終わりに「そうであることよ、いとをかし」

なんて言ってたのを看板にしたんですが、そう言えば吉本興業の若手芸人ネイビーズアフロの毎月のイベントタイトルが「いとをかし」でしたよね。

かぶってしまいましたが、ゴメンナサイね。

 

吉村的流行語大賞は「ち―が―う―だ―ろ―!」

さて、年末恒例「流行語大賞」の候補30語が11月10日に発表されましたね。

いつも楽しみながら見ていたのですが、今年は同日発売の『現代用語の基礎知識・創刊70周年号』に「ギャグで感じる70年」という文章を書いたこともあって、ひときわ興味を持って30語を見たのでありますよ。

 

で、で、「ち―が―う―だ―ろ―!」ですよ。

最初に字面を見て、「えっ、これ何やったかな、誰が言うたんやったかな」と、一瞬ピンとこなかったんですよね。そのうち「そうや、頭が欠けてるわ」と思い出しました。

これって、やっぱり「このハゲ―!」が頭にあって初めて完成句ですよね。

「このハゲ―!ち―が―う―だ―ろ―!」でこそ、あの豊田真由子議員の美しい顔が目に浮かんでくるのです。(僕は、真由子さまはかなりの美人だと思っています)

更には、実際の発声に近い表記にして、

「このハゲェ―っ!ちがうゥだァろォ―っ!」

と、一音ずつはっきり書けばなお一層、美人の真由子さまが怒り狂って叫んでいる声が聞こえてくるような気がします。

多分、世の中の多くの人が実際にこの言葉を口にする時には、成句の全体をしゃべっているでしょうね。

でも、まぁそこは、30語を選んだ「現代用語の基礎知識」の編集部さんたちからすれば「頭髪の薄い人たち」や「世間」に対する、まさしく「忖度」で「ち―が―う―だ―ろ―!」となったのでしょう。これこそ、いとをかし、ですね。

 

「活きたことば」はこういうことです

それはさておき、僕の中では、「2017年流行語大賞」は間違いなくこれに決まり!です。

2017年に、小さな子供から、若い男女、おっちゃんおばちゃん、じいちゃんばあちゃんに至るまでこれほど日本人の一般民衆に使われた言葉はないでしょう。

それは、30語の他の言葉のほとんどが作為的に「作られたことば」であるのに対して、この「ち―が―う―だ―ろ―!」だけが、生身の人間の身体からほとばしり出た「活き活きとしたことば」だったからですよね。この点において「強さ」が全く違います。

豊田真由子議員は、政治家としては何一つ功績らしきものを残しませんでしたが、「ことば」に関してはとても大きな功績を残したと言えるでしょう。

政治家の語る「ことば」や、マスコミで語られている「ことば」が、情報伝達のためだけの薄く弱い「ことば」であるのに対して、身体性に基づいた「ことば」が情緒に裏付けられた厚く強い「ことば」であることを彼女は身を持って示してくれたのです。

ただ真由子さまの場合、使う場所と使う相手を間違えていたのですが、ね。

予算委員会なんかで、あんな「ことば」で質問や追求をやってくれたら国会中継は視聴率30%間違いなしなんですけどねぇ。

おそらく、今の日本の言語空間に必要なのは、このようなことだと思います。

政治や経済や国際を、もっと「身体」や「生活」に密着した「ことば」で語ること。

 

思えば……

思えば、吉田茂の「バカヤロ―」だったり、池田勇人の「貧乏人は麦を喰え」だったり、小泉純一郎の「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」だったり、と歴史に残る政治家の「ことば」は決して高邁な言葉や難しい物言いではありません。

ですが、とてもよくわかる「ことば」なんですよね。

(もっともこれらの発言は、実際に話されたコンテクストからは後にマスコミによってデフォルメされているので、その点は補正して考えなければいけないのですが)

 

という訳で、吉村の選んだ「2017流行語大賞」は「ち―が―う―だ―ろ―!」でした。

このブログについて

元朝日放送プロデューサー、元宝塚造形芸術大学大学院教授の吉村誠のブログです。

よろしくお願いします。

 

現在、

同志社女子大学関西看護医療大学で非常勤講師(マスコミ論、看護と芸術など)

著書:『お笑い芸人の言語学』(2017)ナカニシヤ出版

寄稿:『現代用語の基礎知識2018年』巻頭特集「ギャグで感じる70年」(2017)自由国民社

   『吉本興業百五年史』(2017)ワニブックス

アートグループ「遊糸」のメンバーとして、イベントや作品展示なども行っています。

 

イベント:

「お笑い芸人の言語学とは?」トークショー

news.yoshimoto.co.jp 

メディア論、コミュニケーション論、言語に関する講演多数あり。

「新聞は疑いながら読もう、テレビは突っ込みながら見よう」

「話しことばと書き言葉」

「日常生活の言語論」等

 

大学、大学院での担当科目:

メディア・デザイン基礎セミナー、放送演習、映像、放送番組制作、放送演習、卒業制作・論文、コンテンツプロデュース、マスコミュニケーション論、メディア論、メディアリテラシー、ライティングスキル、エンターテインメント産業論、芸術、看護と芸術、批評論特論等

 

 

過去、

テレビ:「シャボン玉プレゼント

    「ワイドサタデー」

    「新婚さんいらっしゃい!

    「パーティ野郎ぜ!」

    「さんまの花の駐在さん

    「ヤングプラザ」

    「晴れ時々たかじん」(やしきたかじん初の司会番組)

    「ワイドABCDE~す」(創設)

    「ナイトinナイト

    「M-1グランプリ」(創設プロデューサー)

    「大改造!!劇的ビフォーアフター」等

 

映画:「ニワトリはハダシだ」(2004)

   「血と骨」(2004)

   「ビートキッズ」(2005)

   「秋深き」(2008)

   「The ショートフィルムズ みんな、はじめはコドモだった」(2008)等

   他、多くの作品で制作委員会メンバーとして製作・宣伝に携わる。

   また、大阪アジアン映画祭等、多くの映画祭に携わる。

 

演劇:「中之島演劇祭2006」プロデュース等

 

 

※このブログは助手が管理しています。