近畿大学の新年広告――今年も笑わせてくれました!
お正月の新聞紙面には、 今年これから話題になりそうなことが先取りして盛られています。
写真やインタビューなど、てんこ盛り。
新聞――お正月の楽しみは企業広告
それはそれで面白いのですが、 もう一つ僕が楽しみにしているのが、各種企業の一面PR。
各社の宣伝担当と、広告代理店などのCMディレクターたちが、 腕によりをかけた力作ぞろい、なんですよね。
担当したCMディレクターさんたちは、きっと去年の11月から12月にかけて、胃に穴があくほど苦しんだんでしょうね。
今年も攻めていた「近大の広告」
で、で、やっぱり今年も僕を大笑いさせてくれたのは、あの「近畿大学の広告」でありました。
1月3日の新聞朝刊を、社会面からめくっていったら、第二社会面の次にいきなり眼に飛びこんできたのが、
『謹んで新年のお詫びを申し上げます』の文字!
えっ、何、これっ!
綾小路きみまろなら、「中高年のみなさま、謹んでお喜びを申し上げます。その顔で、よくぞこれまで生きていらっしゃいました」だけど。
で、よーく見ると、あの『近大の広告』なのでありました。
最上段、白地に紺文字の『謹んで新年のお詫びを申し上げます』で、パッと読者の眼を惹きつけといて、
その下段に、紺地枠の白抜き文字で、『早慶近中東法明上』のキャッチコピー。
ボディコピーの本文を読めば、昨年2017年正月の紙面で『早慶近』とぶち上げたコピーのお詫び。
「早慶」や「関関同立」など、これまでの「有名大学のくくり形容詞」に対して、「そろそろ誰かがツッコミ入れてもええんちゃいますのん」と独自の異議を申し立てたことへの訂正の態を取った、シャレと更なるPRなのでした。
センス抜群!
ジャーナリズムから生まれる広告
そして、この発想の根っこには、去年一年間の日本で続出した、数々の『お詫び』があることは確か、です。
「このハゲーっ!ちーがーうぅだぁろぉーっ」の豊田真由子さま。
政治家になる人とは、こんなにも厚かましく恥知らずな人たちなのか、と誰もが思ったものでした。
「日産自動車」を始めとする自動車業界の無資格検査。
はては、「現役横綱暴行事件」。
その度に私たち誰もが感じたのは、【まごころのかけらも感じられない謝罪とお詫び】でした。
「近大の広告」には、批評精神がみなぎっています。
げに、「素晴らしいCM」とは、実に優れたジャーナリズム精神から産まれることの見本です。
2018年「近大の紙面広告」は、この「シャレのお詫びづくし」で以下を綴ります。
「2018年問題に関するお詫び」では、18歳人口の減少を押さえて。
「近大マグロに関するお詫び」では、マグロだけでなく多くの魚の養殖を誇りながら食品問題を。
僕のテレビマンとして仕事がらみの思い出ですが、今から40年ほど前に『ワイドサタデー』という番組で和歌山県は白浜にある「近大水産学部養殖研究所」から、マグロ養殖の試行状況を生中継した時には、こんなになるとは予想できませんでした。
標準化された価値を超えるナマズの広告
何よりも、僕が「近大CM」を評価する理由は、「標準語化されない関西弁感覚」です。
今年も最下段には、
『今年も盛大にやらかすんで、先にお詫びしときます』とありました。
思えば、2016年正月の新聞紙面広告で、大きなナマズの顔写真を載せて、
『近大発のパチもんでんねん』
と関西弁のキャッチコピーが踊った時には、その一面を研究室の壁に貼ったものです。
ーーわて、近大生まれのうなぎのパチもん、「うなぎ味のナマズ」ですねん。
パチもん、なめとったらあきまへんでーー
関西弁に限りません、何弁でも良いのです。
「標準化された規範価値」を超えることができるのは、「標準化されないことば」による生活思想です。
「近大のCM」は、一大学のPRにとどまらない、たくさんのことを含んでいる、と僕は思うのです。
素敵でオモロイCMをありがとう。