吉村誠ブログ「いとをかし」

元朝日放送プロデューサーで元宝塚芸術大学教授の吉村が、いろいろ書きます。

日大学長はなぜ真相究明に乗り気でないのか

学長の資格なし

日本大学の大塚吉兵衛学長の記者会見をニュースで見ました。

誰が見てもわかるように、内容空疎で、世間体をとりつくろう為にとりあえず格好をつけました、という記者会見でした。

これが、日本で最大の規模を誇る私立大学の学長か、と唖然としました。

 

日大の現役学生たちの幻滅した反応がテレビで報道されていました。

当然の反応であり、幻滅を感じる感覚の方が正しいことは言うまでもありません。

 

夜の各テレビ局のキャスターや、ゲスト出演している大学教授たちのコメントも的を外しています。あるいは、わかっていながらあえて的外れなコメントをしているのかも知れません。

各局のニュースキャスターたちは、そろって、「よくわからない記者会見でした」と述べていますが、そんなことはありません。

大塚学長の意図は、とても明瞭にわかります。

何が明瞭にわかるかというと、大塚学長は「私が能動的に事件の真相を解明する努力をするつもりはありません」と、態度表明しているではありませんか。

テレビメディアは、こういうことをはっきりと言わないから、多くの若者から「マスゴミ」と見離されてきているのです。

 

ポイントは「真相の解明」

日大アメフト事件で、最も大事なことは、「真相の解明」です。

宮川泰介さんの記者会見の内容と、内田監督・井上コーチの記者会見の内容、との食い違い、を解決する方法はただ一つ、「真相を明らかにすること」です。

そんなことは、誰でもがわかっていることです。

だからこそ、今日の大塚学長の記者会見に、多くの日大の学生や世間はある程度の期待を寄せたのです。

学長ともあろう人なのだから、「真相の解明」について何かは進展的なことを言ってくれるだろう、と。

それなのに大塚氏は、両者の食い違いについては、「食い違っていますね」と他人事のように述べ、さらには「最近の若者にはわからないことがある、みなさんの会社でもそうでしょう」などと小笑いしながら記者に話しかけました。

多くの日大生や保護者の期待を見事に裏切った点において、大塚学長は昨日の米倉久邦氏以上に、大きな失態を演じたと言えるでしょう。

テレビのインタビューに答えていた日大の学生の、「日大らしいですね」という自虐的な答えを聞いて、私は少し悲しくなりました。

 

私立大学の教員と経営側の権力差

大塚学長の記者会見を見て、「どうして学長は、真相解明に努力する」と言ってくれなかったんだろう、と疑問を抱いた方もいらっしゃると思います。

日本の私立大学においては、経営者たる理事長と理事会が絶大な権力をもっていて、教員は教授であろうと学部長であろうと学長であろうと、すべて雇われている従業員に過ぎないのです。

だから、大塚学長も、経営者たる内田監督に不利になるような発言はしないのです。

同様に、テレビにコメントを求められた日大の危機管理学部の教授も、「対応の仕方がまずかった」などと、事の本質からは外れた発言をしているのです。

つまり、学長も教授も、「真相の解明」が最重要なことだとわかっていたとしても、自分の立場を守るためには経営者たる内田監督に不利になるような発言をしないのです。

 

とても悲しいことですが、これが日本の私立大学の教学の実態なのです。

 

大学教授だった私が選んだ道

なぜ私が、こういう私学の実態について憚ることなく書けるか、という理由を言いますね。

それは、私が4年前に、学生をないがしろにした経営理事会に正面からぶつかり、その結果大学を辞めざるを得なくなった、という経験を持っているからです。

私が勤めていた芸術大学は、経営の論理を優先させて、教学の内容や学生生活の充溢を無視して、カリキュラム進行の半ばにもかかわらず、多くの専任教員をいきなり契約不更新するという暴挙に出たのでした。

私は、教学の内容を守るために最後まで理事会側と折衝を続けたのですが、一方では不当に解雇された教員たちを裁判で支える責務もあって、止むを得ず大学を辞めました。

 

大学の教員にとって、専任教員たる資格を失うことは大変苦しいことです。

「大学教授」という肩書も失いますし、安定した給料もなくなります。

ですから、日大の専任教員の皆さん方が、自分の立場と生活を守るために、内田監督に代表される経営者側に「真相解明」の声を上げられない、という心情もよくわかります。

しかし、およそ高等教育に携わる者であれば、何よりも「人間としてのまっとうな生き方」を学生に示すことが第一義なのではないでしょうか。

 

日本大学の専任教員のみなさん、あなたがたの教育者としての誇りを見せてください。

多くの日本大学の学生たちを失望させないでください。

 

私は、専任教員の座を捨てたことにより、経済的には苦しくなりましたが、こうしてブログやツイッターで自分の信じることを堂々と述べる精神的自由を保持することができました。

また、私の生き方に賛成してくれた多くの学生たちの信頼を得ることができました。

 

日大アメフト部の学生諸君に

こうした私の経験を踏まえた上で、日本大学アメフト部の部員のみなさんに贈るエールをさきほどツイッターに書きました。

 

 

今、日本大学の名誉を守ることができるのは、君たちだけなのです!