吉村誠ブログ「いとをかし」

元朝日放送プロデューサーで元宝塚芸術大学教授の吉村が、いろいろ書きます。

テレビ

『M1グランプリ』創設の真実 ――中村計著『笑い神 M1、その純情と狂気』を裁断する――

昨年11月に出版された中村計著『笑い神 M1、その狂気と純情』(文藝春秋社)を読んだ。「M1グランプリ」を創設した者の一人として興味を抱いたからだ。「プロローグ」に「漫才とは何か、笑いとは何か。その核心を、その真髄を覗き見たくなった」と書かれてあっ…

【報道記者の言語学】森喜朗記者会見で見えた日本のマスコミ記者の不甲斐なさ

2月4日(木)の午後2時から行われた、森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の発言撤回記者会見をリアルタイムで見た。 「報道記者」と呼べるのは、TBSラジオ・沢田記者だけだった。 彼以外は、残念ながら「腑抜け記者たち」としか言いよ…

2020年M-1は、「優勝該当者なし」です

年に2回選ばれる芥川賞と直木賞に「該当作なし」という選考結果がある。 そのひそみにならえば、今回の2020年M-1グランプリは「優勝該当者なし」と言うのが、私の感想である。 理由は単純で、出演者のいずれもが「優勝基準に達していない」と、私は思うから…

「M-1」2019所感――「関西弁」が強いのではなく、「生活ことば」が強いのです!!

「漫才・頂上決戦」と銘打って、すっかり年末の風物詩となった「M-1」ですが、今回は決勝初出場の「ミルクボーイ」が優勝するという思わぬ展開で盛り上がって幕を閉じました。 さて、一昨年2018年版の時は、番組終了後の場外で予期せぬ「SNS乱闘」があったの…

台風19号の情報をテレビは事前にどれだけ伝えたか

大きな被害をもたらした台風19号。 今夜16日(水)も、民放の各テレビでは11時台のニュースで、その被害状況を伝えている。 しかし、その報道姿勢は果たして「公器」として適正なものだろうか。 そんな疑問を抱いていたところ、メディア・コンサルタン…

NHK朝ドラ『なつぞら』が終わって

昨日、9月28日(土)、NHK朝ドラの『なつぞら』の最終回が放送されました。 記念すべき、朝ドラ第100作目、という触れ込みもあって放送中から色んな評価が飛び交いました。 さて、僕はテレビの業界で制作者として35年働いてきた立位置から、この『なつぞら』…

「お笑い芸人」の言語力

吉本興業に所属するお笑い芸人の、宮迫博之さんと田村亮さんらの「闇営業」をめぐる問題と、それに続く記者会見についての報道が続いています。 一連の報道を見ていて、『お笑い芸人の言語学』を書いた僕の立ち位置からの考えを述べます。 それは、報道が拡…

新装「NEWS23」を論じる―正統派の「アンカーウーマン」を目指す小川彩佳を高く評価します!

小川彩佳をキャスターに迎えた新生『NEWS23』がスタートしてひと月。 視聴率的には、5月以前とそれほど変化はありませんが、内容的にはずいぶん変化しています。 その変化を、「日本のテレビニュースの作り方」という構造的な視点と、「キャスターのことば…

「日本のテレビ報道」の歪みをチェックする

大学で「マスコミ論」を講義しています。 日々の新聞やテレビニュースを題材にして、その「ニュース表現」に込められた「表現者の意図」を読み取る力を身に付けよう、という授業です。 読み取る入口となるのは、「表現」を成している「ことば」と「映像」で…

ある大阪人から見た「大阪ダブル選挙の結果」の読み方

東京に住んでいる友人からメールが入りました。 「大阪のダブル選挙の結果がよくわからない。 なぜ大阪維新の会は、大阪都構想にこだわるのか、関東の私には理解不可能です。 W選で勝っても民意を問えば負けてしまうのに。 なにか関西独特の政治思想があるの…

期末期首の特別ドラマ――『ひよっこ2』と『僕が笑うと』

3月半ばから4月半ば、にかけて、テレビは「期末・期首編成」と称してゴールデン・プライムタイムに単発の特番を並べたてます。昔は、せいぜい4月の番組改編をはさんで前後1週間ずつくらいだったのですが、今ではおよそひと月間にわたっているので、いったい…

2019冬ドラマから見える、テレビ制作者の「表現者の志」

今年の冬ドラマが、第4話~第5話を終えたところで、私なりの作品評をしてみます。 作り手としての「裏事情」をも読み取りながら、です。 そこから、サラリーマンでありながらも「テレビドラマ」という「表現作品」に取り組んでいるテレビマン達の「表現者と…

M-1審査員コメントの読み解き方と炎上への感想

大学で「マスコミニュケーション論」なる授業をやっています。 講義の核にしているのは、「表現」の背後にある「表現発信者」の気持ちや意図を読み解く、ということです。 で、学生たちの間でも「M-1」が話題となっており、先週も何人かの学生から「M-1審査…

審査員に求める「言語化」能力――M-1感想へのコメントに答えて

様々なコメントを頂きました。 お礼と捕捉の意味を込めて、このブログを更新します。 なるほどなぁ、そういう受け止め方も確かにあるな、と思いつつ皆さんのコメントをじっくりと読ませていただきました。 もちろん、芸能であれ、文章であれ、「表現」は受け…

うーん? 優勝は「和牛」でしょう!――「お笑い」と「ことば」

今年も、笑いながら、拍手しながら、ヒヤヒヤしながら「M-1グランプリ」を見ました。 自分が立ち上げに関わったテレビ番組が大きく育って、今や、押しも押されぬ「漫才界の頂点」を競うビッグな番組になったことは、とても嬉しいことです。 テレビの画面…

NTV「ニュースZERO」の有働由美子さん

日本テレビの夜11時台のニュース「ニュースZERO」が、元NHKアナの有働由美子さんを起用して、この秋編成の大きな話題になっています。 しかし、残念ながら今日までのところ、「新生・ニュースZERO」はまったくの期待外れ!です。 headlines.yahoo.co.jp この…

『Mrサンデー』西日本豪雨の報道―日本のテレビマンの倫理意識の堕落

大学の前期授業の終わりにあたって、女子大生たちの「近頃、気になったニュース報道」として、 「西日本豪雨の際の、『Mrサンデー』の水没する車」のことを初めて知りました。 大学で「マスコミュニケーション論」を教えている立場として、日々のデイリーの…

オウム事件とマスコミの報道責任について―今、もう一度、自己批判が必要ではないのか

今日、7月6日(金)に、麻原彰晃こと松本智津夫らオウム真理教の元幹部7人の死刑が執行されたことが大きなニュースとして、新聞やテレビで報じられた。 それらの報道は、概して「この事件を風化させてはならない」とか、「二度とこのような事件を起こしてはい…

気持ちを落ち着かせるべく『68歳の新入社員』を見ました。

昨日18日に大阪では震度6という大きな地震があって、大変な一日でした。 死傷者を知らせるアナウンサーのことばを聞き、火災の映像や噴き出す水の映像を見ながら、なんとも言えない気持ちでした。 それは、私が、1995年1月17日に起きた「阪神淡路大震災」の…

日大学長はなぜ真相究明に乗り気でないのか

学長の資格なし 日本大学の大塚吉兵衛学長の記者会見をニュースで見ました。 誰が見てもわかるように、内容空疎で、世間体をとりつくろう為にとりあえず格好をつけました、という記者会見でした。 これが、日本で最大の規模を誇る私立大学の学長か、と唖然と…

朝ドラ『半分、青い。』に、すっかりはまってもうたわ!

今期の、NHK朝ドラ『半分、青い。』岐阜篇に、はまってまいました。 いいです、いいです、ホントに素敵です。 4月の後半が、なんだかんだと忙しかったので、溜まっていたドラマをGWにまとめて見たんですが、『半分、青い。』で泣かされました。 そして、何…

ハリウッド映画と日本のテレビドラマを、比べてはいけないけど

先週、アメリカのアカデミー賞が発表され、日本人として初めて辻一弘さんがメーキャップ賞を受賞したことが大きく報道されました。拍手!拍手!です。 で、その映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』。 www.churchill-movie.jp チャ…

ドラマ『天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~』が良かった!

いやぁ、何となく良さそうな予感がして、金曜日はドラマをリアルタイムで見たのです。 ytv・大阪よみうりテレビの60周年スペシャルドラマ『天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~』 良かった!です。 民放でも、これくらいのドラマが作れるんだ!…

NHK朝ドラ『わろてんか』を、業界人的に楽しんでます!

NHKの朝ドラ『わろてんか』が、終盤にさしかかり、やっと「女興業師・北村てん」の話になってきました。 で、登場する芸人たちが「笑芸・現代史」につながってき始めたので、僕は少し変わった楽しみ方でこの頃ずっと見ています。それは、『わろてんか』に出…

圧巻の演技と演出――NHK「西郷どん」渡辺謙vs鹿賀丈史――ドラマのリアリティ

大学の前期授業終わり、なんだかんだで、twitterの更新も「いとをかし」ブログの更新も滞ってしまいました。「インフルエンザで倒れてるんちゃうかぁ」とメールで安否を気遣って下さった方々、ありがとうございました。誠さんは元気です。 真剣に見てるドラ…

芥川賞発表と、今期のテレビドラマの「ことば」

昨日、第157回芥川賞が発表されました。吉村がイチ押ししていた『おらおらでひとりいぐも』が見事受賞。よかったですねぇ、若竹千佐子さん、おめでとうございます。 方言は好き?嫌い? で、「63歳の新人」と言うことで、早速テレビメディアでは大きく扱って…

M-1補足と、朝日放送スキャンダル

「M-1グランプリ」の余波が、まだ色んなところで続いていますね。 僕も、創設プロデューサーとして、前回のブログで今年の「M-1」について思うところを書いたのですが、その後、教えている大学生たちからたくさんの質問を受けました。 で、その応答の中から…

M-1グランプリ――M-1史上最高の面白さ!でした

12月恒例の「M-1グランプリ」今年は格別に盛り上がりました。 決勝戦での最後の審査員投票が「4対3」というのも実に劇的でした。 そして、放送が終わった後も、他のテレビ番組やラジオや週刊誌などでその余熱がいまだに続いていますね。 僕も、数日前に…

「どの口が言うとんねん」――テレビ出演者の精神的堕落

前回のブログで、NHK「クローズアップ現代+」のディレクターさんを始めとするテレビ制作者たちの精神的堕落について書いたのですが、今回はテレビの出演者の精神的堕落について書くことにします。 週刊文春12月7日号に載った「宮根誠司・隠し子の母激白」と…

日本のテレビメディアのあり方を批評する

新聞の書評欄や文化面で取り上げられて気になった本があると、その新聞記事を切リ抜いてストックしておく癖があります。 決して、その全部を読み切ることはできなくて、多くはストックファイルの中で眠ったままになるのですが。 で、そのファイルの中にあっ…