吉村誠ブログ「いとをかし」

元朝日放送プロデューサーで元宝塚芸術大学教授の吉村が、いろいろ書きます。

ことば

『M1グランプリ』創設の真実 ――中村計著『笑い神 M1、その純情と狂気』を裁断する――

昨年11月に出版された中村計著『笑い神 M1、その狂気と純情』(文藝春秋社)を読んだ。「M1グランプリ」を創設した者の一人として興味を抱いたからだ。「プロローグ」に「漫才とは何か、笑いとは何か。その核心を、その真髄を覗き見たくなった」と書かれてあっ…

2020年M-1は、「優勝該当者なし」です

年に2回選ばれる芥川賞と直木賞に「該当作なし」という選考結果がある。 そのひそみにならえば、今回の2020年M-1グランプリは「優勝該当者なし」と言うのが、私の感想である。 理由は単純で、出演者のいずれもが「優勝基準に達していない」と、私は思うから…

「コロナ政治」の言語学――政治家のことば

豊かな「ことば」とは何か? 加藤厚労相の「ことば」の誤解 現代日本の政治家の「ことば」 「しゃべる」と「読む」の違い 「知識の言葉」ではなく「暮らしのことば」で 豊かな「ことば」とは何か? 「自分の言いたいことがはっきり言え、また自分の心のすみ…

「M-1」2019所感――「関西弁」が強いのではなく、「生活ことば」が強いのです!!

「漫才・頂上決戦」と銘打って、すっかり年末の風物詩となった「M-1」ですが、今回は決勝初出場の「ミルクボーイ」が優勝するという思わぬ展開で盛り上がって幕を閉じました。 さて、一昨年2018年版の時は、番組終了後の場外で予期せぬ「SNS乱闘」があったの…

「お笑い芸人」の言語力

吉本興業に所属するお笑い芸人の、宮迫博之さんと田村亮さんらの「闇営業」をめぐる問題と、それに続く記者会見についての報道が続いています。 一連の報道を見ていて、『お笑い芸人の言語学』を書いた僕の立ち位置からの考えを述べます。 それは、報道が拡…

近頃の女子大生ことば

「せんせぇー、最近、タピってますぅ?」 ――は、はぁ、なんて、何のこと?――キョトンとしてる私に、 「今日、めっちゃ暑いんで、みんなでタピりに行ってきま~す。授業、ちょい休み」 ――楽しそうに、しゃべりながら歩いてゆく女子大生たち。 女子大で教えて…

新装「NEWS23」を論じる―正統派の「アンカーウーマン」を目指す小川彩佳を高く評価します!

小川彩佳をキャスターに迎えた新生『NEWS23』がスタートしてひと月。 視聴率的には、5月以前とそれほど変化はありませんが、内容的にはずいぶん変化しています。 その変化を、「日本のテレビニュースの作り方」という構造的な視点と、「キャスターのことば…

「日本のテレビ報道」の歪みをチェックする

大学で「マスコミ論」を講義しています。 日々の新聞やテレビニュースを題材にして、その「ニュース表現」に込められた「表現者の意図」を読み取る力を身に付けよう、という授業です。 読み取る入口となるのは、「表現」を成している「ことば」と「映像」で…

期末期首の特別ドラマ――『ひよっこ2』と『僕が笑うと』

3月半ばから4月半ば、にかけて、テレビは「期末・期首編成」と称してゴールデン・プライムタイムに単発の特番を並べたてます。昔は、せいぜい4月の番組改編をはさんで前後1週間ずつくらいだったのですが、今ではおよそひと月間にわたっているので、いったい…

M-1審査員コメントの読み解き方と炎上への感想

大学で「マスコミニュケーション論」なる授業をやっています。 講義の核にしているのは、「表現」の背後にある「表現発信者」の気持ちや意図を読み解く、ということです。 で、学生たちの間でも「M-1」が話題となっており、先週も何人かの学生から「M-1審査…

審査員に求める「言語化」能力――M-1感想へのコメントに答えて

様々なコメントを頂きました。 お礼と捕捉の意味を込めて、このブログを更新します。 なるほどなぁ、そういう受け止め方も確かにあるな、と思いつつ皆さんのコメントをじっくりと読ませていただきました。 もちろん、芸能であれ、文章であれ、「表現」は受け…

うーん? 優勝は「和牛」でしょう!――「お笑い」と「ことば」

今年も、笑いながら、拍手しながら、ヒヤヒヤしながら「M-1グランプリ」を見ました。 自分が立ち上げに関わったテレビ番組が大きく育って、今や、押しも押されぬ「漫才界の頂点」を競うビッグな番組になったことは、とても嬉しいことです。 テレビの画面…

気持ちを落ち着かせるべく『68歳の新入社員』を見ました。

昨日18日に大阪では震度6という大きな地震があって、大変な一日でした。 死傷者を知らせるアナウンサーのことばを聞き、火災の映像や噴き出す水の映像を見ながら、なんとも言えない気持ちでした。 それは、私が、1995年1月17日に起きた「阪神淡路大震災」の…

日大学長はなぜ真相究明に乗り気でないのか

学長の資格なし 日本大学の大塚吉兵衛学長の記者会見をニュースで見ました。 誰が見てもわかるように、内容空疎で、世間体をとりつくろう為にとりあえず格好をつけました、という記者会見でした。 これが、日本で最大の規模を誇る私立大学の学長か、と唖然と…

日大アメフト部の監督・コーチの記者会見、について

日大アメフト部の悪質タックル問題については、新聞やテレビやネット上で既に多くの人が発言をしていますが、現在大学の教壇に立つ者の一人として、私は大変な怒りを感じており、このブログで私の考えを述べます。 結論を先に言うと、日大アメフト部の内田監…

朝ドラ『半分、青い。』に、すっかりはまってもうたわ!

今期の、NHK朝ドラ『半分、青い。』岐阜篇に、はまってまいました。 いいです、いいです、ホントに素敵です。 4月の後半が、なんだかんだと忙しかったので、溜まっていたドラマをGWにまとめて見たんですが、『半分、青い。』で泣かされました。 そして、何…

大阪人は、「文字の言葉」にも笑いのセンスが溢れてますわ!

いそがしさにかまけて、ブログ書くのを怠ってましたら、何人かの方から、「倒れてるんちゃうか?」とか、「生きてるか?」との、お気づかいをいただきました、ありがとうございました。 大学の新学期が始まったのと、次に出そうと思っている本の原稿書きに追…

ハリウッド映画と日本のテレビドラマを、比べてはいけないけど

先週、アメリカのアカデミー賞が発表され、日本人として初めて辻一弘さんがメーキャップ賞を受賞したことが大きく報道されました。拍手!拍手!です。 で、その映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』。 www.churchill-movie.jp チャ…

ドラマ『天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~』が良かった!

いやぁ、何となく良さそうな予感がして、金曜日はドラマをリアルタイムで見たのです。 ytv・大阪よみうりテレビの60周年スペシャルドラマ『天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~』 良かった!です。 民放でも、これくらいのドラマが作れるんだ!…

圧巻の演技と演出――NHK「西郷どん」渡辺謙vs鹿賀丈史――ドラマのリアリティ

大学の前期授業終わり、なんだかんだで、twitterの更新も「いとをかし」ブログの更新も滞ってしまいました。「インフルエンザで倒れてるんちゃうかぁ」とメールで安否を気遣って下さった方々、ありがとうございました。誠さんは元気です。 真剣に見てるドラ…

それ違うんじゃないの?――新聞の小説評について

さて、少ししつこいようですが、芥川賞受賞作『あらおらでひとりいぐも』を巡る言説の中でどうしても見逃すことのできないのが新聞記者の論評です。 多くの新聞が、この小説を「老境を生きるための小説」だとか、著者を「こども時代の夢を叶えた人」だとか評…

芥川賞発表と、今期のテレビドラマの「ことば」

昨日、第157回芥川賞が発表されました。吉村がイチ押ししていた『おらおらでひとりいぐも』が見事受賞。よかったですねぇ、若竹千佐子さん、おめでとうございます。 方言は好き?嫌い? で、「63歳の新人」と言うことで、早速テレビメディアでは大きく扱って…

近畿大学の新年広告――今年も笑わせてくれました!

お正月の新聞紙面には、 今年これから話題になりそうなことが先取りして盛られています。 2018年と言えば、『ピョンチャン・オリンピック』に、『 藤井・羽生フィーバーの将棋界』に、『NHK大河ドラマ・ 西郷どん(せごどん)』などなど。 写真やインタビュ…

今こそ読まれるべき小説、「ことばと生活」を巡って

吉村の第158回芥川賞はこれ! 芥川賞の候補作の中に『おらおらでひとりいぐも』という小説が入っていたので、気になって読みました。 で、で、で、です。 素晴らしい!です。 小説という形式で、こんなに見事に「ことばと人生」のありようをつづった文章に久…

M-1補足と、朝日放送スキャンダル

「M-1グランプリ」の余波が、まだ色んなところで続いていますね。 僕も、創設プロデューサーとして、前回のブログで今年の「M-1」について思うところを書いたのですが、その後、教えている大学生たちからたくさんの質問を受けました。 で、その応答の中から…

M-1グランプリ――M-1史上最高の面白さ!でした

12月恒例の「M-1グランプリ」今年は格別に盛り上がりました。 決勝戦での最後の審査員投票が「4対3」というのも実に劇的でした。 そして、放送が終わった後も、他のテレビ番組やラジオや週刊誌などでその余熱がいまだに続いていますね。 僕も、数日前に…

「どの口が言うとんねん」――テレビ出演者の精神的堕落

前回のブログで、NHK「クローズアップ現代+」のディレクターさんを始めとするテレビ制作者たちの精神的堕落について書いたのですが、今回はテレビの出演者の精神的堕落について書くことにします。 週刊文春12月7日号に載った「宮根誠司・隠し子の母激白」と…

2017年・テレビドラマ総括 最優秀作品はNHK『ひよっこ』

11月の末で、少々気が早いのですが、僕なりの2017年テレビドラマの「評価まとめ」をしておきたいと思います。 と言うのも、気になっているドラマの初回スタートを見届けたので。 この秋冬ドラマで僕が最も期待していたのは、実はNHKの金曜夜10時『マチ工場の…

中村鋭一先輩のこと

全日本レベルで「エイちゃん」と言えば「ロックの矢沢永吉」のことでしょうが、関西圏で「エイちゃん」と言えば「六甲おろしの中村鋭一」のことなんですよね。 その「鋭ちゃん」こと中村鋭一さんが、11月6日に亡くなられました。87歳でした。 関西のスポーツ…

吉村的流行語大賞は……

近頃、世の多くの人もすなるブログといふものを、我もしてみんとしてすなり。 てな訳で、今日から、吉村誠ブログ「いとをかし」を始めます。 もともと友だち仲間としゃべる時に、話の終わりに「そうであることよ、いとをかし」 なんて言ってたのを看板にした…